「追悼のざわめき」という映画を見ました。
80年代に制作された伝説のカルトムービーらしいです。その存在をどこから聴きつけたのか、定価10000円ほどのDVDを友人が購入。「見てみてよ」と言うので、僕はそれを借りたまま、ずっと部屋のTVの上に飾っておりました。桐箱って美しい。…じゃなくて、なんだか観るのに体力が要りそうだったんだよね。
そんな感じで数ヶ月経って、ぐつぐつと業を煮やした友人が「じゃあ一緒に観ようよ」と誘いをかけてくれたので、やっとこ重い腰を上げて観ることにしました。観たのは人気もいなくなった夜中の学校。虫に刺されつつ、ムヒを身体に塗りたくりつつ、鑑賞しました。蛙や虫の鳴き声のみ響き渡る夜中の学校は、静かでいいね。
冒頭は、不快なシーンばかりが続きます。
いや、正確に言うと最初から最後まで不快なシーンづくしなのかもしれないけれど、最初の方はとにかく映像を飲み込めなかった。
主人公が女性を殺して、その性器を取り出してマネキン人形の中に埋め込んだり、傷痍軍人に徹底的な暴力を与えたりと、意味がわからない。さすがカルトムービーっぽいなあと思いつつ眺めていたんだけど、物語が進むにつれ主人公達が生活している日常っていうのが掴めて来て、次第にその行動も飲み込めるようになっていったんですね。
この物語の主人公達は、いずれも愛が欠乏していると思う。
生身の女を愛せない男
木人形で性欲を満たす浮浪者
小人症で周囲の愛を得られない女
自らの性欲のために妹を亡くした少年
そう考えていくと、主人公達の行動にもどこか納得がいくというか、一つ一つの奇行が愛を求めるための必死な"もがき"に見えてくるのです。それって何かぼくらにも共感できるものがあるような気がしました。
それでも、主人公や、それを取り巻く日常は狂ったものなので、一つ一つのシーンは強烈に頭に残ります。
殺害現場の横を平然と通り過ぎていく電車
主人公と人形の恍惚としたワルツ
小人症の女性を容赦なく嘲笑う乗客たち
次々と閉まっていくシャッター
血の海の中の少女
死体と戯れる少年
人形の破壊
業火に燃える屋上
散り散りになる群集
草むらと風車
思い返すだけでも沢山あります。
確かにグロテスクなシーンも多いけれど、そこに一抹の美しさも隠れているような気がする。それはやはりそこに描かれているものがどこまでも人間の姿だからかなあ。心の動きというか。
しかし、映像自体は後半に進むにつれ確実にカタルシスの要素が強くなり、どこか解放されていくような感覚がありました。単純に映像的に美しいシーンも多い。
この映画、役者さんも良い味出しています。
主役の佐野和宏さんも渋くて良いけれど、何と言っても夏子役の仲井まみ子さんがスゴイ。よくこんな映画出たなと言わざるを得ないけれど、自然な演技と、人間的な魅力でぐいぐいと映像を引っ張っているような気がします。特に後半は独壇場。気が触れて、街や学校を疾走するシーンのリアリティは物凄い!(実際、テロ気味に行われた撮影らしくて、そこから滲み出る迫力なのかもしれないけれど)
兄と妹役の隈井士門さんと村田友紀子さんも美しい顔立ちをしていますね。村田さんの恍惚とした表情は凄い…。
友人と二人で見終わった頃には、お互いなかなか感慨深いものを感じていたのだけれども、さてこの気持ちを伝えようとしても、他にこういう映画を理解できる人が身近にいるか?と考えると、ウーンと、やっぱりなかなか難しいなと思いました。過激なシーンは多いと思うし、大抵の人はそこに拒否反応を示すと思う。少なくとも、汚い、臭い、暗がりの中の蠢きを、それでもじっと見つめられるような人でないと。
でも、世の中にもっとそういう人が増えても良いように思う今日この頃。。



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